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よく見かける下剤「酸化マグネシウム」
私は特養の介護施設で働いる29歳の男性です。
介護の仕事をしていると、よく見かける薬の一つとして「下剤の酸化マグネシウム」があります。
・酸化マグネシウム(サンカマグネシウム:略称、カマ、カマグ)
・マグミット
・マグラックス
という名前を聞くと、「あ〜、あの薬ね」「おばあちゃんが食後に飲んでいる下剤の薬やね」と思われる方もおられると思います。
酸化マグネシウムの体内でどう働くのか?
酸化マグネシウム「MgO」+胃酸「HCL」→塩化マグネシウム「MgCl」
塩化マグネシウム「MgCl」+膵液「NaHCO3」→炭酸水素マグネシウム「Mg(HCO3)2)」
下剤の酸化マグネシウムは、腸内の水分量を増やして、排便を促す薬です。
なので、下剤の「酸化マグネシウム」を飲んでも、「水分」を飲まなければ便秘は改善されません。
昔から飲まれているメジャーな下剤の薬「酸化マグネシウム」の副作用
「酸化マグネシウム」は昭和25年(1950年)から便秘薬として広く飲まれている薬です。
酸化マグネシウムの薬を飲んでいる患者数は、2013年で約1000万人です。
2012年から2013年までに酸化マグネシウムの薬を飲んで「高マグネシウム血症」になる事例が「29件」。うち死亡例が「4件」報告されています。
これを受けて、酸化マグネシウムの添付文章に新たに注意書きが追加されました。
「酸化マグネシウム」は「高マグネシウム血症」の重篤な副作用があるため「高齢者へ慎重投与」すること。
2008年から重篤な副作用があると注意喚起された「酸化マグネシウム」
【酸化マグネシウムによる「高マグネシウム血症」の事例】
80代の女性が便秘薬として「酸化マグネシウム」を服用。
認知症にて病院か介護施設に入所していた80代の女性が突然大量の下痢を起こし、意識消失のため救急搬送。
血中マグネシウム濃度が17.0mg/dLと高い測定値で「高マグネシウム血症」による呼吸停止で死亡。
長期投与で不整脈、心停止もなりうる市販薬の便秘薬「酸化マグネシウム」
2020年も、高齢者も長期服用者にも注意喚起される「酸化マグネシウム」
このおくすりを長く服用し続けている患者さん、腎臓に病気のある患者さん、高齢の患者さんにおいて、「高マグネシウム血症」が多く報告されています。
特に便秘症の患者さんでは、腎機能が正常な場合や通常服用する量でも重篤な例が報告されていますので、注意してください。
「高マグネシウム血症」は、放っておくと重い症状(息苦しい、意識がもうろうとする、心停止)になることがありますので、早めに医療機関を受診することが大切です。早めに発見し適切な処置をおこなえば大事に至ることはほとんどありません。
酸化マグネシウムの副作用「高マグネシウム血症」とは
「高マグネシウム血症」と聞いても、どんな症状なのか具体的なイメージが湧かなかったので、少し調べてみました。
「高マグネシウム血症」とは「血液中のマグネシウム濃度が高い状態」のことだそうです。
ひじき、ごま、インスタントコーヒー、イワシなどの食べ物にも「マグネシウム」は含まれていますが、
こららの食材を食べ過ぎても「高マグネシウム血症」になることはありません。
体内の過剰なマグネシウムは尿で排出されるので、健康体の人が「高マグネシウム血症」になることはありません。
ただ腎臓が悪く、排尿する能力が低下している人が、下剤「酸化マグネシウム」の「マグネシウム」を体外に排出できず「高マグネシウム血症」になるケースがあります。
通常のマグネシウムの血中濃度は「1.8〜2.4mg/dL」(=180mg~240mg/mL)
2.7mg/dL(270mg/mL)を超えると「高マグネシウム血症」と診断されます。
「高マグネシウム血症」になっても自覚症状はほとんどなく、
「高マグネシウム血症」の初期症状は
・低血圧
・吐き気
・嘔吐
・口の渇き
・皮膚紅潮(顔が赤くなる)
・尿が出にくい
・筋力の低下
・傾眠(眠くなる)
・徐脈(脈拍が下がる)
などの症状が現れます。
重度の「高マグネシウム血症」になると
・手足の麻痺
・心停止
といった危険な状態に陥ります。
下剤の酸化マグネシウムの年間の使用者は「約4000万人」といると推定されています。
下剤の酸化マグネシウムの薬をストップすると「高マグネシウム血症」の症状が回復します。
「高マグネシウム血症」の原因は、マグネシウムを尿が排泄できない腎不全
腎不全で、マグネシウムが尿で排泄できないことが「高マグネシウム血症」の原因です。
腎臓が正常に働いて、尿が排泄していたら「高マグネシウム血症」にはなりません。
しかし、高齢者の多くが「腎臓を悪くする薬」を飲んでいます。
「高血圧の薬」「糖尿病の薬」「利尿剤」
これらの薬の副作用で、腎臓機能が悪化します。
高血圧の薬の副作用が「腎不全」
高血圧の薬によって「寝たきり老人」が生み出されているカラクリは、以下の記事に解説しているので、ご参照ください。
高齢者の「ただの老化現象」に過ぎない「高血圧」と「脱水症状」を、「糖尿病の初期症状」と診断して「薬」が処方されている現実があります。
糖尿病患者の半数は、高血圧の患者です。
高血圧の患者は「利尿剤」を飲んで、体内の水分を排出することで、血圧を下げます。
利尿剤を長年飲み続けることで、腎臓を悪くし、尿をうまく排泄できなくなります。
ここでさらに、下剤の「酸化マグネシウム」を飲めば、尿でマグネシウムを排泄できず「高マグネシウム血症」になるリスクが跳ね上がります。
自覚症状のない「高マグネシウム血症」。
便秘になりやすい高齢者。
歳を重ねるごとに、血管の弾力性を失い、血圧高くなる高齢者。
血圧が高くなることで、脳の細い血管の血管の詰まりも押し流し「脳梗塞」になりにくい「高血圧のメリット」
高血圧を下げる薬で、心臓の動きを止めて、低血圧になることで「脳梗塞」になりやすい「低血圧のデメリット」
年間4000万人が飲む「酸化マグネシウム」に副作用があることを知らなかった私
介護施設で働く私ですが、下剤の酸化マグネシウムは副作用が小さく比較的安全な薬だと思っていました。
しかし高血圧の薬を飲み続けて、腎臓がボロボロになった高齢者にとって「酸化マグネシウム」は心停止する恐れがある薬だということが調べていくうちに分かりました。
酸化マグネシウムの初期症状は自覚症状がなく、便秘薬として長年飲み続けている高齢者の人は多いです。
そして、もし酸化マグネシウムの副作用で心停止で死亡した場合でも、他の持病の悪化による死亡と診断される恐れがあります。
心停止で死亡した原因が「5年以上飲み続けて何ともなかった下剤」だと認識されない可能性が容易に想像つきます。
便秘薬の酸化マグネシウム。
運動不足や水分不足が改善されたら、介護施設の多くの高齢者の便秘が解消されると思います。
活発で動きのあるエネルギッシュな高齢者は、介護施設では「介護しにくい高齢者」です。
大人しく動きの少ない高齢者は、介護施設にとって「介護しやすい高齢者」です。
「介護施設の機能訓練の運動」によって、トイレでの動作がスムーズになったり、麻痺がある拘縮が改善されたりします。
ご批判も承知で思い切って言わせてもらうと、
介護しやすいように「体の機能」が改善される「介護施設の機能訓練」という風に見えなくともありません。
スマホ操作をしてLINEでお孫さんに写真を送る「脳の機能」を良くする「機能訓練」は介護施設では見たことがないです。
スマホ操作できる高齢者は、多くの介護施設にとって「介護しにくい高齢者」に分類されるでしょう。
その人の人生の質「QOLの向上」を掲げる介護業界ですが、人件費が厳しい介護業界にとって「介護しやすい高齢者」を生み出す「薬の副作用」に頼らざるを得ない状況です。
団塊世代が75歳以上になる2025年に求められる「新しい時代の介護」とは
介護報酬を最終的に決めるのは「厚労省大臣」です。
スマホを使う機能訓練に「介護報酬」の「点数」が加算されれば、日本の介護は変わるかもしれません。
介護施設で動画を配信するYouTuberのご利用者が当たり前になる世の中になれば、日本から寝たきり老人はいなくなるでしょう。
「脳は歳とともに衰える」は嘘です。
「脳はいくつになっても発展させることができます」
私が以前勤めていた介護施設には、80代になっても嬉しそうにお孫さんのLINEのメールを見せてくれる「おばあちゃん」がいました。
動きも、口数も少ない静かな介護施設よりも、
動きも、話し声も絶えない賑やかな学校のような介護施設が一つや二つあっても良いのではないでしょうか?
新しい時代の介護に可能性について、これからも探求していきます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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